飲食店の税務

2014.07.29

久しぶりの税務調査です

もう梅雨明けも間近で、

夏本番の季節が近づいてきました。

 

みなさん夏休みの予定はお決まりでしょうか。

 

休んでなんかいられないという多忙な方もいらっしゃるかも知れませんが、

夏バテなどしないよう体調管理に気をつけ、これからの暑い夏を乗り切りましょう。

 

さて、今回は先日久しぶりに立ち会った

税務調査に関するお話をさせていただきます。

 

みなさんの中にも税務調査を経験された方はいらっしゃると思いますが、

調査を受ける本人にとっては、何回経験しても気分のいいものではないようです。

 

故意に不正を働いていなくても間違いは誰にでもあるものです。

 

予期せぬ指摘から多額の納税が発生することを心配して

調査期間中ほとんど眠れなかったという人もいます。

 

通常、税務調査で問題となるのは所得の過少申告です。

 

売上の計上漏れや経費の一部否認など所得の申告漏れが問題となり、

修正申告書を提出し追徴税額を納税することで終了するケースがほとんどです。

 

ところが、今回立ち会わせてもらった調査の主な争点は所得の申告漏れではなく、

所得の過大計上である粉飾決算の取り扱いだったのです。

 

粉飾ということは本来納める必要のない税金を納めているのだから

税務署が問題にすることはないだろうと考える方もいるかも知れません。

 

しかし、話はそう簡単ではないのです。

 

以下では、粉飾決算の何が問題となるのかについてお話ししていきます。

 

ところで、先程久しぶりの税務調査だと書きましたが、

実際ここ1年ちょっと税務調査の立会いはありませんでした。

 

1年以上調査がなかったというのは、

私にとっても初めての経験ですが、

平成25年以降、全国的に税務調査の数がかなり減少しているようなのです。

 

その理由は、平成23年に税務調査の手続きなどを

定めている国税通則法という法律が改正されたことにあります。

 

改正後は今まで以上に調査手続の透明性が求められるようになったため、

税務署内でその対応に追われているようなのです。

 

この件についての詳細は、また次の機会に取り上げたいと思います。

 

粉飾決算とは

粉飾決算とは、不正な会計処理を行うことで

虚偽の財務諸表を作成して行われる虚偽の決算報告です。

 

広い意味では売上の過少計上や架空経費の計上など

税務上脱税行為とされる不正経理も粉飾決算に含まれますが、

一般的には赤字企業が体裁を整えるために売上を水増し計上したり、

本来計上すべき経費を翌期以降へ繰り延べたりする経理処理を意味します。

 

このような粉飾決算は会社規模を問わず、

昔から行われていて監査法人の監査を受けているような上場会社でさえ

問題とされることがあります。

 

最近ではオリンパスやカネボウといった有名企業の粉飾が問題となりました。

 

少し前だとライブドアの一件は大々的に取り上げられていたので、

ご記憶の方も多いかと思います。

 

このような粉飾決算は何のために行われるのでしょうか。

 

それは資金調達のためです。

 

増資でも借入でも、企業は投資家や金融機関から資金を調達し

運用することで存続しています。

 

決算内容が悪い会社は増資しても引き受けてくれる投資家がいません。

 

銀行から借りるにしても高い金利を求められます。

 

事業の形態にもよりますが、

一般的に資金調達が出来なくなった時点で会社は倒産してしまいます。

 

そのような最悪の事態を避けるために

やむを得ず一時的に粉飾決算に走ってしまうのです。

 

翌期に業績が回復できればいいのですが、

2~3年も経営不振が続くと粉飾の金額は累積的に大きくなっていきます。

 

最終的には決算内容のつじつま合わせにも無理が生じ、

世間に粉飾が露呈される結果となってしまうのです。

 

税法上の取り扱い

先程も述べましたが通常粉飾は利益を大きく見せるために行われます。

 

つまり税務的には課税所得を過大に計上し、

納めなくてもいい税金を納める結果となります。

 

このことから粉飾について税務署が

特に問題にすることはないと思われる方もいるようです。

 

しかし、実際は違います。

 

確かに本当は赤字の会社が架空売上を計上して

法人税を納めていれば税務署としては、

本来支払う必要のない税金を徴収出来たのですから、

何も文句は言わないでしょう。

 

問題は、その後の処理なのです。

 

会計上架空の売上を計上するということは、

その売上に見合う売掛金を計上するということです。

 

この売掛金は架空のものなので、

そのままでは未来永劫決算書上から消えることはありません。

 

しかし、未回収の売掛金が永遠に残り続けるということは通常ありえません。

 

会社としても金融機関等からその売掛金の内容について

細かい説明を求められると困ることになります。

 

そこで、なるべく早めに決算書上から消去してしまいたい

と考えるようになります。

 

ではどのように処理したらいいのでしょうか。

 

業績が改善していれば貸倒処理や売上値引きのように損金処理してしまえば

課税所得も圧縮でき一石二鳥です。

 

しかし、税務上このような処理がそのまま認められることはありません。

 

税務署は粉飾をして多めに納税している時は何もいいませんが、

後になってやっぱり過去の粉飾を取り消したいといっても認めてはくれないのです。

 

法人税法にも、このような場合の取扱いに関する定めが設けられています。

 

税務署長は粉飾の事実を把握していても、

粉飾をした会社が自ら過去の粉飾を修正する経理をした確定申告書を

提出するまでは更正しないことができるのです。

 

つまり、決算書上特別損失等の科目で過去の粉飾を

明示的に修正したうえで、

税務署長に対し課税所得を減額して欲しい旨の請求を行うことになります。

 

この手続きを更正の請求といいます。

 

そして、税務署長は請求の内容を吟味し、

場合によっては実地調査のうえ、

その請求を認めるかどうか判断することになります。

 

この手続きは非常に手間暇がかかります。

 

結果的に更正の請求が認められ、

一部法人税が還付されたとしても還付金額が法人税の申告書上、

「仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額」

という欄に記載されてしまうので、対外的に過去の粉飾経理が明らかになってしまうのです。

 

おわりに

今回の調査では、追徴税額が数千万円に達するケースや

金融機関から今後一切融資を受けられないケースなど

いくつかの最悪のケースを想定したうえで、調査官との折衝に臨みました。

 

社長や経理担当の役員さんはもちろん、

私にとっても久しぶりに神経を擦り減らす調査でした。

 

ここで、調査の結果をお伝えすることはできませんが、

過去の粉飾を修正することは非常に大変です。

 

「行きはよいよい、帰りは怖い」

 

ということにならないように、

くれぐれも安易な粉飾決算は行わないように注意してください。

 

税理士 荻原 岳志



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