飲食店の税務

月別アーカイブ: 8月 2014

このところの暑さには、

参っている人も多いのではないでしょうか。

 

どうやらエルニーニョ現象の影響による

冷夏という予想は外れたようです。

 

気温が上がると家庭での調理は敬遠されがちになるので

外食産業は潤うそうです。

 

ですが、あまりに暑くなり過ぎると外出することも億劫になり、

自宅で過ごす時間が多くなるので、

外食産業にとってはマイナスになるそうです。

 

体調管理の面からも、

暑さもほどほどにしてもらいたいものです。

 

さて、今回は先日お客様(Aさん)から相談された

贈与に関する事案をお伝えしたいと思います。

 

Aさんのお母様は個人で不動産賃貸業を行っており、

複数の賃貸物件を所有しています。

 

確定申告もしていて、

毎年2千万円程度の不動産所得(税率50%)があります。

 

所有している財産は、こ

の賃貸不動産と他に金融資産が数千万円ありますが、

賃貸不動産には銀行の抵当権が設定されていて、

借入金は数千万円残っています。

 

また、既に70歳を超えていて、

将来の相続も見据えた対策が必要な状況となっています。

 

一方、Aさんはサラリーマンで給与所得はありますが、

年収は500万円(税率30%)程度です。

 

このような状況の中で、

将来の相続対策として何かすべきでしょうかとのご相談です。

 

皆さんならどのようなご提案をされるでしょうか。

 

答えは簡単です。

 

お母様が所有する賃貸不動産をAさんへ贈与してあげればいいのです。

 

うまく贈与できれば今後の賃貸収入はAさんに帰属するので、

2人合わせた所得税は減額されるでしょう。

 

また、このように所得の帰属先を変更することで

将来の相続対策にもつながってきます。

 

ただし、賃貸不動産を贈与する時には

色々と注意しなければならない事項がありますので、

以下で特に注意が必要な事項について見ていきます。

 

贈与税の仕組み

まず、贈与の仕組みについて簡単に確認します。

 

現行の贈与税には、

暦年贈与と相続時精算課税贈与という2つの形式があります。

 

暦年贈与では年間110万円を超える部分について贈与税が課税されますが、

超過累進税率を適用していて贈与財産の価格が1000万円を超えると

贈与税率が50%になってしまい、相続税と比べて非常に高い税負担となっています。

(27年以降は税率に変更があります。)

 

他方の相続時精算課税贈与では贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、

その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と

相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、

すでに納めた贈与税相当額を控除することで贈与税・相続税を通じた納税を行う制度です。

 

この制度によると贈与財産の累計額が2500万円までは贈与税はかからず、

2500万円を超える場合に、その超えた金額の20%が課税されることになります。

 

一度選択したら生涯変更できないなどのリスクはありますが、

一般的に、将来価値が上がる可能性の高い有価証券や、

毎年収益を生み出す賃貸不動産の贈与に適している制度と言われています。

 

贈与財産の評価方法

ところで、皆さんは贈与税の計算の

前提となる贈与財産の評価方法をご存知でしょうか。

 

相続税法を中心に相続・贈与では

それぞれの財産ごとに細かく税務上の評価方法が定められています。

 

例えば、相続財産に占める割合が

一番高いと言われている土地を見てみましょう。

 

皆さん、路線価という言葉を聞いたことがあるかと思います。

 

毎年7月に国税庁から公表されているものですが、

評価上の土地の単価を表したものです。

 

土地の評価額は簡単に言うと、

その土地の面積に路線価を乗じたものになります。

 

実際には、その土地の形状、接する道路や周囲の環境などによっても

評価額は異なってきますが、

概算額は面積×路線価と覚えていてもらえればいいかと思います。

 

ただし、この評価額は自宅や自営の店舗など

自分で使用する場合を前提とした評価額です。

 

土地そのものを他人に貸し付けたり、

土地の上に建てたアパートを他人に貸したりすると、

所有者本人が自由に利用処分できなくなるので、

その分土地の評価額は低くなるように定められています。

 

また、建物については原則的に固定資産税評価額で

評価することになっていますが、

賃貸用の建物は土地と同じく所有者の権利が制限されているということで

自宅に比べて評価額が引き下げられています。

 

暦年贈与か精算課税贈与か

さて、前置きが長くなってしまいましたが、

今回の案件の場合、暦年贈与を使うべきでしょうか。

 

それとも精算課税贈与を使うべきでしょうか。

 

また、先ほど賃貸不動産を贈与すると言いましたが、

具体的に賃貸不動産とは、建物としての賃貸アパートだけにすべきでしょうか。

 

それともアパートと一緒に土地も含めるべきでしょうか。

 

いろいろと検討すべき事項はありますが、今回のケースでは、

贈与税の負担をなるべく抑え、将来の家賃収入をAさんのものとするためには、

精算課税贈与を利用した賃貸アパート(建物)の贈与が

一番適しているとAさんにお伝えしました。

 

暦年贈与や土地も含めた贈与の場合、

税負担が大きく納税が困難なことなどを、

実際の数値を使ったシュミレーションで説明し理解していただきました。

 

他に検討すべき事項は

最終的に、賃貸建物を精算課税で贈与するということに決まりましたが、

ここで注意すべき事項があります。

 

今回対象になった賃貸不動産には、

抵当権が設定されていて借入金も残っているということです。

 

銀行との話し合いの結果、

この残債は受贈者であるAさんが引き継ぐことになりました。

 

そうなると今回の贈与は負担付贈与ということになり、

先ほど述べた建物の評価方法は使えず、

建物は通常の取引価額で評価する必要が生じてきます。

 

そして、その評価額から引き継いだ借入金の残高を差し引いた価額が

贈与税の課税対象となります。

 

この辺りのことも事前に織り込んでおかないと後になって

大幅に計画を変更せざるを得ないというような結果になってしまいます。

 

また、Aさんのお母様に残された土地についても

検討しておく必要があります。

 

この贈与が行われた後の土地の評価はどうなるのでしょうか。

 

贈与後にAさんとお母様との間で

地代のやりとりをする予定はありません。

 

結論を申し上げますと、

この土地は貸家建付地として更地にくらべ相続税評価額は低くなります。

 

ただし、贈与後にアパートの入居者が入れ替わると

その分評価額は上がってしまうのです。

 

細かい話は省きますが、賃借人の入退去があっただけで

土地の評価額が変わるなどとは一般の人には

理解しがたいことかも知れません。

 

最後に、不動産の贈与には、贈与税の他に登録免許税や

不動産取得税といった税金もかかってきますので、

資金計画には当然織り込んでおく必要があります。

 

抵当権も新たに設定し直す場合には

登録免許税がかかってきますのでご注意ください。

 

私も以前、数億の借入を伴う事業計画を作成した後に、

抵当権設定についての登録免許税を

取り込み忘れたという失敗をしたことがあります。

 

計画の作成はくれぐれも慎重に。

 

税理士 荻原 岳志

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