飲食店の税務

月別アーカイブ: 6月 2014

今年も早いものでもう梅雨入りです。

 

梅雨が明けると夏本番という感じですが、

今年の夏は数年振りのエルニーニョ現象になるという予想もあります。

 

そうなると冷夏になる可能性が高いとのことですが、

景気に与える影響が心配です。

 

さて、今回はこのところよく話題に取り上げられることの多い

配偶者控除という制度について考えてみましょう。

 

先日、自民党から公表された「日本再生ビジョン」には

次のような提言がされています。

 

「配偶者控除は、配偶者の年収が103万円までなら、

本人の給与所得から38万円までを差し引く事ができ、

所得税が安くなるため、夫か妻だけが働く世帯に恩恵が大きい。

 

一方で、パートの妻らが103万円に届かないよう仕事量を調整する傾向があるとされ、

女性の社会進出を妨げているとも指摘される。」

 

このように、専業主婦世帯の優遇制度である配偶者控除を廃止し、

共働き世帯と同様の税負担をさせるべきとの指摘があるようです。

 

果たして、この指摘は当たっているのでしょうか。

 

以下では、配偶者控除という制度が設けられた趣旨や

過去の経緯などから今後の配偶者控除制度のあるべき姿を検討していきます。

 

配偶者控除制度の概要

配偶者控除とは個人の所得税の計算上認められている所得控除の一種で、

納税者に控除対象配偶者がいる場合に38万円の所得控除が受けられる制度です。

 

控除対象配偶者とはその年の12月31日の現況で、

次の4つの要件すべてにあてはまる人です。

 

①民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)

 

②納税者と生計を一にしていること。

 

③年間の合計所得金額が38万円以下であること。

 

④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて

一度も給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

 

この4つの要件に当てはまる代表的な例が専業主婦ということになります。

 

そもそも、このような配偶者控除制度が設けられたのは

憲法に定められた生存権を保障するためだと言われています。

 

日本国憲法25条には健康で文化的な最低限度の生活を営む権利として

生存権が定められていて、この生存権を維持するための

最低限の生活費については憲法上課税することは許されないと解釈されています。

 

そこで所得税では全ての人に最低限の生活費として

基礎控除38万円を認めています。

 

この最低限の生活費は性別・年齢を問わず全ての人に認められるべきで、

所得の多寡に関係なく必要なものです。

 

しかし、所得のない人に所得控除を認めても意味はないので、

その場合には扶養義務者である配偶者に自分の基礎控除に加え、

配偶者の基礎控除分として配偶者控除を認めているのです。

 

103万円の壁

給与所得者の所得計算は、

給与収入額から給与所得控除額を差し引いて求めますが、

給与所得控除額は給与収入が162.5万円までは

65万円(ただし給与収入の金額が上限です。)と決められています。

 

そのため給与収入が103万円の場合には、

103万円から65万円を差し引いた38万円がその人の所得ということになり、

控除対象配偶者の適用要件を満たすことになります。

 

仮に、給与収入が104万円になると給与所得控除は65万円で変わらないので、

所得が39万円となり控除対象配偶者の適用要件から外れてしまう結果となります。

 

これがいわゆる「103万円の壁」というやつです。

 

先の自民党からの提言にもあるように

世間の専業主婦の人はこの103万円を超えないように年間の収入金額を計算して、

労働時間を調整しているようです。

 

実際、私も同様の話や質問を受けることがよくあります。

 

しかし、この考え方は果たして正しいのでしょうか。

 

以下に、2つの事例で簡単に効果を検証してみます。

 

前提条件としてサラリーマンのご主人の年収は500万円で、

家族構成は奥さんと小学生の子供2人、その他の控除類はないものとします。

 

まず、最初に奥さんのパート収入が103万円のケースです。

 

この場合、奥さんが旦那さんの控除対象配偶者となることは上述したとおりです。

 

旦那さんが負担する所得税は以下のようになります。

 

収入:500万円、給与所得控除:154万円、基礎控除:38万円、配偶者控除38万円

 

所得=500-154-38-38=270万円

 

所得税:17.25万円

 

つぎに、奥さんのパート収入が104万円のケースです。

 

この場合、奥さんは旦那さんの控除対象配偶者にはなれません。

 

収入:500万円、給与所得控除:154万円、基礎控除:38万円、配偶者特別控除:38万円

 

所得=500-154-38-38=270万円

 

所得税:17.25万円

 

どちらも、所得税は17.25万円になります。

 

専業主婦の奥さんが一方では控除対象配偶者となり、

もう一方では控除対象配偶者ではないのに結果は一緒です。

 

なぜ、このような結果になるのでしょうか。

 

それは所得税には、

配偶者の所得が38万円を超えて配偶者控除を受けられなくても、

配偶者の所得が一定の金額までは、

配偶者特別控除という所得控除を受けられるためです。

 

配偶者特別控除の額は配偶者の所得が増えるにつれ、

減っていきますが、所得税では、

所得が38万円(給与が103万円)を超えたからといって、

いきなり控除額を0円にするのではなく、

段階的に減少させていくという緩和措置を設けているのです。

 

しかし、この仕組みを理解している人はあまり多くないように感じます。

 

新聞報道等の記事でさえ、

配偶者特別控除について触れているものはほとんど目にしません。

 

配偶者控除と女性の社会進出との関係

このように見てくると、

配偶者控除という制度が女性の社会進出を阻んでいるとの指摘は

正しくないということが分かると思います。

 

正確には制度の仕組みへの理解不足が原因ということです。

 

そうであれば、制度の仕組みの周知を徹底することで対応できるかもしれません。

 

ただ、扶養手当を支給している会社で、

支給の基準を配偶者の所得が38万円以下であることとしている場合には

103万円の前後で所得の金額が大きく変わるため、

ひとつの壁となってくることも考えられます。

 

また、配偶者控除以外にも、

女性の社会進出を阻んでいるものとして

「130万円の壁」というものが取り上げられることがあります。

 

130万円とは社会保険の扶養に入れるかどうかの

基準となる給与の収入金額です。

 

旦那の扶養に入っていれば、

健康保険も年金も保険料を負担する必要がありません。

 

これが130万円を超えた途端、

1人の被保険者として保険料を負担しなくてはならなくなるのですから、

その出費はばかになりません。

 

個人的にはこちらの制度をどうにかすべきだろうと感じています。

 

今後の方向

配偶者控除は生存権の保障という制度の趣旨からすれば維持すべきです。

 

ただ、昔に比べ家族構成や勤労形態が大きく変わっている中で、

世間的な不公平感を感じている人も多いようです。

 

今後どのように対処していくべきでしょうか。

 

去る5月24日付けの日経新聞朝刊に

「所得控除、夫婦一体で」との見出しの記事が掲載されていました。

 

「配偶者控除の見直し問題で妻の収入がいくらになっても

夫婦全体の控除額が変わらない新制度を作る案が、

政府内に浮上してきた。  

 

夫婦それぞれが基礎控除(38万円)を持ち、

働く妻の年収にかかわらず控除額は合算され、

一律76万円になる仕組みだ。「家族控除」とも呼ばれる。

 

年末の税制改正大綱決定に向けて議論になる。」

 

とのことです。

 

一部では、単に配偶者控除を廃止すべきだとの主張もありましたが、

この「家族控除」のように夫婦二人で

76万円の所得控除という考え方が現実的にも、理論的にも妥当だと思われます。

 

この考え方を更に発展させていくと、

将来的には個人課税から配偶者の有無や

子供の数も考慮した世帯課税へという方向で議論が進んでいくかもしれません。

 

税理士 荻原 岳志

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