飲食店の税務

月別アーカイブ: 2月 2014

今年も確定申告の季節がやってきました。

 

既に申告も納付も終わっているよという人もいるかも知れませんが、

今回は、これから申告する人のために

事業所得における必要経費について取り上げます。

 

サラリーマンの人の中には、自分たち給与所得者は経費を引けないのに、

個人で事業を行っている人は何でも経費にできるから

羨ましいと考えている人がいるようです。

 

(給与所得者にも給与所得控除という概算経費は認められています。

またあまり利用実績はないようですが、

特定支出控除という実額経費を控除するための制度もあります)

 

また、個人事業主の方の中には、

領収書さえあれば何でも必要経費にできると思っている人もいるようです。

 

しかし、このような考え方は決して正しくはありません。

 

所得税では必要経費の範囲が決められていて、

その範囲を逸脱する支出については経費として認めてもらえないのです。

 

税金を安くするために何でもかんでも経費に算入してしまうと、

後々の税務調査で痛い目に会うことになってしまうかもしれません。

 

そのような事態を避けるために、税務上どこまでが経費として認められるのか、

その考え方を抑えておきましょう。

 

必要経費の金額

所得税において必要経費とは、

「別段の定めがあるものを除き、

これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため

直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費

その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とされています。

 

つまり、必要経費は以下の2つから成り立っているということです。

 

① 総収入金額に対応する売上原価その他その収入金額を得るために直接要した費用の額

② その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

 

1つ目は売上との個別的な対応関係が要求されるもので、

飲食店でいえば食材費が該当します。

 

2つ目は、売上との期間的な対応関係が要求されるもので、

一般的に販管費などと呼ばれています。

 

家賃や水道光熱費などが該当しますが、

この販管費について、おととし東京高裁で注目される判決が出されています。

 

弁護士業を営むかたわらで弁護士会の役員を務めていた納税者が、

弁護士会の役員として出席した懇親会等の費用を

弁護士業の必要経費に算入できるかを争って国税当局を訴えた事案です。

 

一審の東京地裁では納税者が敗訴していますが、

控訴審の東京高裁では納税者の主張が認められたのです。

 

一審では、懇親会への出席は弁護士会の役員としての活動であって

弁護士の事業には該当しないので必要経費とは認められないとの判断でした。

 

しかし、控訴審では弁護士として行う事業所得を生ずべき業務の遂行上

必要な支出であるとして必要経費性が認められたのです。

 

簡単にいうと、直接業務に関連していなくても業務上必要性があれば

必要経費に算入できるということです。

 

この訴訟は現在最高裁で争われているため、

最終的に確定はしていませんが、

税務調査で経費性を否認された時に、反論するための大きな根拠になるものです。

 

飲食店を経営するに当たっても地域の商店会や

業界団体の会合などがあるかと思います。

 

このような会合に参加するために支出した費用も

業務上必要であれば必要経費に算入できることになります。

 

今までこの辺りの経費は調査官によって判断が異なっていましたが、

今後は業務上の必要性を主張することで否認されるおそれはかなり減ったと言えます。

 

ただし、業務上の必要性の主張は合理的・客観的でなければなりません。

 

必要経費の算入時期

必要経費となる金額は、

その年において債務の確定した金額(減価償却費を除きます。)になります。

 

その年に支払っていても債務が確定していなければ

必要経費になりませんし、

逆に支払っていなくても債務が確定していればその年の必要経費ということになります。

 

ここでいう債務が確定しているとは、

次の3つの要件を全て満たしている場合をいいます。

 

①その年の12月31日までに債務が成立していること。

 

②その年の12月31日までにその債務に基づいて

具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

 

③その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。

 

例えば店舗の内装工事の場は合、

12月31日までに工事が完了していて請求書が手許に届いているか、

もしくは見積書などで金額を客観的に判断できる状況にあれば、

支払が年明け以降であっても債務が確定しているものとして未払金に計上できることになります。

 

家事関連費の取扱い

個人の業務においては一つの支出が家事上と

業務上の両方に係わりがある費用となるものがあります。

 

これらを家事関連費といいます。

 

家事関連費も税務調査でよく問題にされる事項です。 

 

例えば自宅の賃貸マンションの一部屋を事務所として

利用している場合の地代家賃や水道光熱費、

仕事とプライベートに供用している車の減価償却費や携帯電話代などです。

 

これらの家事関連費のうち必要経費にできるのは次の金額です。

 

①主たる部分が業務の遂行上必要であり、

かつ、業務に必要である部分を明らかに区分することができる場合のその区分できる金額

 

②青色申告者で、取引の記録などに基づいて、

業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分することができる場合のその区分できる金額

 

どちらも業務上必要な部分を明らかに区分できることが要求されています。

 

自宅兼事務所の場合の家賃は面積比で按分できます。

 

車の減価償却費やガソリン代は、

業務上と業務外のそれぞれの走行距離から

業務上必要な部分を区分することができます。

 

このように一定の合理的な基準によって明確に区分する必要があります。

 

必要経費にならないもの

所得税では、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは

必要経費にすることはできません。

 

受け取った人の側も所得として認識する必要はありません。

 

これは土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。

 

ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために

借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、

子が営む業務の必要経費にすることができます。

 

 また、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金は

原則必要経費にできません。

 

必要経費とするためには、

その年の3月15日までに青色事業専従者給与に関する届出を提出する必要があります。

 

青色事業専従者となれるのは青色申告者と

生計一の配偶者か親族で15歳以上の人に限られます。

 

更に、1年のうちに6ヶ月超事業に従事する必要があります。

 

その他、所得税や住民税は必要経費とすることはできませんが、

事業税は必要経費になりますので、ご注意ください。

 

以上、ざっと事業所得の必要経費について見てきました。

 

少しでも多く経費を計上して、納税額を少なくしたいという気持ちは分かりますが、

あまり無茶な処理をしていると後々の税務調査でのリスクも大きくなります。

 

皆さん、どこまでが必要経費として認められるのか、

所得税法上の基本的な考え方を理解したうえで判断してください。

 

税理士 荻原 岳志

コメントを残す




▲PAGETOP