飲食店の税務

月別アーカイブ: 1月 2014

皆さん、明けましておめでとうございます。

 

新年1回目の掲載です。

 

本年も少しでも皆さんのお役に立てるような記事を記載していきますので、

宜しくお願いいたします。

 

今回も前回に引き続き相続税についてですが、

その前に先日ちょっと気になるレポートを目にしましたので、

そちらについて少しお話させてください。

 

それは、ある大手の民間シンクタンクから発表された

「消費税率引上げに伴う家計負担」というレポートでした。

 

文面の中で消費税の税率が5%から8%に引き上げられた場合、

消費税負担額は年収300万円世帯で約15万円、

年収1,000万円以上世帯で約37万円になり、

10%ではそれぞれ19万円、47万円になると試算されていました。

 

これを負担率で見ると現行5%では年収300万円世帯が4.1%、

年収1,000万円以上世帯が1.7%ですが、税率が8%ではそれぞれ6.5%、2.7%。

 

更に、10%になるとそれぞれ8.1%、3.4%まで上昇し、

税率引き上げは低所得者世帯の負担率を増加させ重税感をより高めるとの指摘から、

低所得者へのより一層の配慮をすべきだとの結論に至っていました。

 

果たしてこの指摘は正しいのでしょうか。

 

確かに消費税の負担率だけを見れば正しいかも知れません。

 

ですが、税金は消費税だけで賄われているわけではありません。

 

他に所得税・相続税などの国税もあれば、

住民税・固定資産税などの地方税もあります。

 

所得税については高所得者向けに給与所得控除の引下げや

最高税率引上げが行われています。

 

また、現在16歳未満の年少扶養親族については

扶養控除が廃止されていますが、

この影響は高所得者層の方が負担の大きいものとなっています。

 

相続税についても今回のテーマである平成25年税制改正で

課税対象額を拡大するための改正が行われていて、

大いに注目を集めています。

 

このように消費税以外のところで、

高所得者には大きな増税が行われているのです。

 

ここで、私が言いたいのは高所得者も増税されているのだから、

低所得者も増税に耐えるべきだというようなことではありません。

 

特定の税だけを取り上げれば、ほとんど影響のない人もいれば、

大きな影響を受ける人もいるのです。

 

特定の立場から特定の税金だけを取り上げて、

税負担の軽重を議論することには問題があります。

 

特に大手シンクタンクのようなところは、

もう少し大局的立場から啓蒙的な意見を発するべきではないでしょうか。

 

総論賛成・各論反対はよくある話ですが、

木を見て森を見ないような対応は避けたいものです。

 

相続税改正の内容

さて、いきなり話が大幅にずれてしまいましたが、

今回の本題である相続税に話を戻します。

 

前々回は民法における相続の取扱いを確認し、

前回に相続税の計算の仕組みを確認しました。

 

概略ではありますが、

相続というもののイメージを少しは持ててもらえたのではないでしょうか。

 

そこで、今回は非常に大きな影響があると言われている

平成25年度の相続税に関する税制改正を取り上げます。

 

今回の大きな改正点は基礎控除の縮小と税率引上げの2点になります。

 

まずは基礎控除の縮小についてです。

 

前回も触れましたが、現在の相続税の基礎控除は

5,000万円+1,000万円×法定相続人の数になっています。

 

これが、改正後は3,000万円+600万円×法定相続人の数に縮小されます。

 

つまり基礎控除が現行の6割に縮小されてしまうのです。

 

法定相続人1人でも2,400万円、2人だと2,800万円、3人では3,200万円

の縮小なのでかなり大きな影響があるものと思われます。

 

次に相続税の税率引上げについてです。

 

現行の相続税の税率は1千万円以下の10%から

徐々に上昇していき、3億円超では50%となっています。

 

これが改正後は2億円超3億円以下が45%となり、

6億円超では55%に引き上げられます。

 

さすがに相続財産が2億や3億という話になると

そうそう該当する人はいないので、

こちらはそれ程大きな話題にはなっていないようです。

 

なお、これらの改正は平成27年1月1日以降の相続から

適用されることになります。

 

相続税改正の影響

それでは、上記相続税の増税は実務にどの程度影響してくるのでしょうか。

 

相続税の申告割合は現状4%程度ですが、

これが6%程度に上昇するのではと言われています。

 

まだまだ全体に占める割合は低い数値ですが、

申告義務者が1.5倍になると考えるとかなり大きな影響がありそうです。

 

以下で、具体的な数値例を用いてその影響額を見てみましょう。

 

≪事例≫

被相続人:夫

法定相続人:妻・長男・次男の3人

遺産:自宅土地(40坪、1,200千円/坪)

:自宅建物(評価額3,000千円)

:死亡保険金(20,000千円)

 

この場合の課税価額は

土地48,000千円

+建物3,000千円

+死亡保険金5,000千円(20,000千円-非課税限度額15,000千円)

=56,000千円になります。

 

改正後の基礎控除額は法定相続人3人の場合48,000千円ですので、

56,000千円から48,000千円を差し引いた8,000千円が課税の対象になってきます。

 

8,000千円に対する税率は10%なので

8,000千円×10%=800千円

が納めるべき相続税の総額ということになります。

 

仮に法定相続分通りに遺産分割が行われたとすると

それぞれ妻400千円、長男200千円、二男200千円の納税になります。

 

ただし、後で触れますが相続税には小規模宅地の特例

という制度が設けられていて一定の要件のもと、

居住用の宅地は大幅に評価減することができるので、

実際に納税までに至るケースは多くないかもしれません。

 

ただ、この特例を使うには申告が要件となっています。

 

それでは、この相続が26年中に発生していたらどうなるでしょうか。

 

基礎控除額は80,000千円なので、

相続財産の評価額が同じであれば相続税の申告義務自体がないということになります。

 

やはりこの差は大きいのではないでしょうか。

 

事例で用いた相続人が配偶者と子供2人で、

主な資産は自宅と生命保険金だけというパターンはよくあるケースだと思われます。

  

特に都心に親から相続した自宅を所有しているような人は

他に資産が無くても相続税の申告だけはしなければならないケースも出てきそうです。

 

一般の人が相続税の申告について検討しなければならないのは、

一生のうち両親の相続の時の2回程度ではないでしょうか。

 

毎年必要な所得税でさえ、対応に苦慮している納税者がいる現状を考えると、

事例のように決して富裕層とまでは言えないような人たちが対応できるのか心配なところです。

 

今のうちからもっと世間へ周知する必要がありそうです。

 

小規模宅地の特例

相続税法上では多くの特例が設けられています。

 

先程触れた小規模宅地の特例もそのひとつです。

 

評価減の対象となる宅地には大きく分けて事業用と居住用があります。

 

今回はこのうち居住用宅地について摘要要件等を確認しておきます。

 

摘要の対象となるのは被相続人

もしくは被相続人と生計を一にする親族が住んでいた宅地で、

減額割合は評価額の80%です(5,000万円の評価が1,000万円になります)。

 

被相続人の配偶者が相続する場合には他に適用要件はありませんが、

例えば、被相続人が住んでいた宅地を被相続人と同居していた親族が相続する場合には、

相続税の申告期限までそこに住み、かつ、所有し続けなければなりません。

 

申告期限まで売ってはだめということです。

 

更に被相続人と同居していなかった親族が相続する場合には

もっと厳格な要件が定められています。

 

また、この特例の適用を受けるためには、

申告が要件とされていて戸籍謄本や住民票の写しなどの書類を添付しなければなりません。

 

本来適正に申告しておけば相続税はかからなかったのに、

申告し忘れていたとか添付書類の一部が漏れていたとかという理由で

相続税が追徴課税されるケースもでてくるかも知れません。

 

皆さん、くれぐれもご注意ください。

 

税理士 荻原 岳志

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