飲食店の税務

月別アーカイブ: 12月 2013

今回も前回に引き続き相続税について見ていきます。

 

前回は相続税の話の前提として相続の取扱いについて確認しました。

 

相続手続きについては、民法で定められていますが、

その中でも重要と思われる相続人・法定相続分・遺産分割・遺留分

について取り上げました。

 

忘れてしまった方は、前月号をもう一度ご確認ください。

 

その他の重要なポイントとして、相続放棄・限定承認を追加しておきます。

 

相続人は被相続人の財産債務を包括的に承継することが原則ですが、

被相続人が債務超過の場合にも同様に被相続人の財産債務の

全てを引き継がせることは相続人にとってあまりに酷だということで設けられた制度です。

 

相続放棄は被相続人の遺産の相続を放棄する制度で、

財産を取得できない代わりに債務も引き継ぐ必要がありません。

 

限定承認は相続財産の範囲内で債務を引き継ぐ制度です。相

続財産で債務を返済しきれない場合、

相続人は残った債務の弁済を免責されることになります。

 

どちらも相続があった事を知った日から3ヶ月以内に

家庭裁判所へ申し立てする必要があるので注意してください。

 

それでは、ここから今回の本題である相続税について見ていきます。

 

相続税の計算方法は単純です。

 

まず遺産総額を求め、ここから基礎控除を差し引きます。

 

次に各相続人が法定相続分で相続したものとして

各相続人の相続税額を算出します。

 

そして個別に求めた税額を合計し、

実際の相続分に応じて各相続人が負担すべき相続税額を求めます。

 

最後に、このようにして求められた各相続人の相続税額から

各種税額控除を差し引くことで、

各相続人が納めるべき納税額が求められることになります。

 

このように相続税の計算方法は単純ですが、

実際に申告するにあたっては様々な専門的知識が要求されます。

 

以下では、実際に相続税の申告をする際に

どのような点に注意すべきかについて見ていくことにします。

 

遺産総額の算出

 

相続税は正味の遺産総額に対して課税されます。

 

つまり相続財産そのものが課税の対象とされる訳ではなく、

相続財産から債務と葬式費用を差し引いた残りが

課税の対象になるということです。これを純資産価額といいます。

 

相続税の申告をする場合、

一番厄介なのがこの正味の遺産総額の算出です。

 

極端な話、この算出さえ出来てしまえば、

後は単純に計算式に当てはめていくだけと言ってもいいかも知れません。

 

それでは、何故それ程遺産総額の算出が難しいのでしょうか。

 

ひとつには、被相続人に帰属している全ての財産・債務を把握することが

困難だということがあります。

 

長年連れ添った夫婦の間でさえ

「へそくり」のような存在は当たり前です。

 

相続人が子や孫になるとどこにどのような財産があるのか

皆目見当もつかないというケースもあります。

 

このような場合には、過去の所得や生活の状況、

趣味や交友範囲といった状況証拠により相続財産に

漏れがないということを主張するための資料作成が重要となってきます。

 

さらに財産が把握できたとしても、その評価が難しいのです。

 

基本的に相続財産は、

国税庁が定めている財産評価基本通達に従って評価します。

 

現金・預金の評価額は実際の残高なの簡単です。

 

しかし、土地や非上場株式の場合は

通達に定められた評価方法自体が複雑で、

更にそれぞれ固有の事情に適した評価をしなければならないケースもあり、

評価の仕方によっては評価額に数千万円もの違いが生じることもあります。

 

特に土地の評価については、

それぞれの土地の物理的な特徴や権利関係を考慮する必要があるため

専門的な知識が要求されます。

 

また、被相続人が住んでいた家の宅地であるなどの

一定の条件を満たせば大幅な評価減(最大80%)を使うこともできるので、

それだけ慎重に評価しなければならないのです。

 

以上の他に遺産総額の把握を難しくしているものとして

相続人名義の財産があります。

 

一見すると相続人名義の財産は相続人の財産なので、

被相続人の相続には関係ないようにも思われますが、

相続税の税務調査でよく問題とされる部分です。

 

生前、被相続人が相続人の名義を借りて銀行口座を開設し、

実質的に被相続人が管理していたような場合には、

名義人が相続人でも実質的な所有者は被相続人ということで

相続財産として取り扱われることになってしまいます。

 

税務調査でこのような認定課税を受けないためには、

それなりの説明資料の作成が必要になってきます。

 

基礎控除

基礎控除は25年税制改正で大幅に変更があった部分です。

この変更によってどのような影響があるのかは

次回にお伝えするとして、ここでは現状の取扱いを確認します。

 

基礎控除とは相続税の課税対象となる遺産総額を求めるためのもので、

課税価格から基礎控除を差し引いたものが相続税の課税対象額になります。

 

現状の基礎控除額は5千万円に法定相続人1人あたり

1千万円を足した金額となっています。

 

例えば相続人が配偶者と子供2人の場合、

5千万円+1千万円×3人=8千万円になります。

 

相続人が1人でも6千万円の基礎控除が認められていて、

このことが相続税の負担比率を極端に

引き下げているということで今回改正の対象とされました。

 

相続税の税率

 

相続税の税率は、所得税と同じく超過累進税率となっています。

 

超過累進税率とは課税対象額をいくつかの区分に分類し、

課税対象額が大きくなるに連れその区分ごとに高い税率を適用して、

税額を求める方法です。

 

例えば、課税対象額が2千万円の場合の税額は次のとおりです。

 

税率区分は1千万円までは10%、

1千万円を超えて3千万円までは15%となっているので

税額は1千万円×10%+(2千万円-1千万円)×15%=250万円になります。

 

よく2千万円全てに15%が適用されるのではないかと

誤解されている人がいますが、高い税率が適用されるのは、

超過した部分だけなのでご注意ください。

 

現状の相続税の税率は1千万円以下の10%から

3億円超の50%まで6段階となっています。

 

どんなに資産をもっていても孫の代には

すべて税金で持っていかれるという話は、

この最高税率50%を指してのことのようです。

 

さらに今回の改正では最高税率が55%に引き上げられていますが、

対象範囲は6億円超なので、ほとんどの方に影響はないものと思われます。

 

税額控除

最後に、主な税額控除の内容について触れておきます。

 

相続税にも所得税や法人税と同様に

いくつかの税額控除が認められています。

 

税額控除とは課税対象額に税率をかけて求めた税額から

直接税額を差し引く制度です。

 

相続税には、配偶者の税額軽減や贈与税額控除、

未成年者控除や障害者控除、相次相続控除などが設けられています。

 

この中で最もよく使われるのが配偶者の税額軽減です。

 

配偶者の税額軽減とは被相続人の配偶者が遺産を取得した場合、

一定の金額までは一切相続税がかからないという制度です。

 

その上限額は1億6千万円もしくは法定相続分のどちらか多い金額になります。

 

例えば遺産が10億円あって相続人が配偶者と子供1人だった場合、

配偶者の法定相続分は5億円なので、

1億6千万円と5億円の多い金額である5億円までは相続税がかからないのです。

 

これ程の相続財産を持っている人はほとんどいないでしょうが、

相続財産が1億6千万円以下であれば全てを配偶者が相続することで

相続税は0円になるのです。

 

ただし、相続人である配偶者は通常被相続人と同年代であり、

次の相続がそう遠くない時期に訪れる可能性が高いので、

実務では次の2次相続まで見越した遺産分割が行われ、

相続税対策としても1次相続と2次相続の相続税の合計額を

最小化するようなスキームが望ましいものとされています。

 

また、この配偶者の税額軽減は実際に遺産を分割し

財産を取得することが前提となっています。

 

申告期限までに分割されていない財産は

対象から除かれている点には注意してください。

 

以上で、簡単ですが相続税の計算方法についての説明が終わりましたので、

次回は25年の相続税改正の内容と今後に与える影響について

お話させていただく予定です。

 

税理士 荻原 岳志

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