飲食店の税務

月別アーカイブ: 10月 2013

去る10月1日、ついに安倍首相が26年4月から消費税率を

8%へ引き上げることを正式に表明しました。

 

実に17年ぶりの引き上げです。

 

最近の経済指標は景気回復局面にあることを示すものが多く、

 

また、消費税率引き上げは国際公約にもなっており

ここでの増税見送りは日本の財政再建への不信感を増幅させます。

 

結果的に世界経済に悪影響を及ぼすということで

先延ばしにはできないとの結論に至ったようです。

 

一方で、消費税増税による景気悪化への対応として

総額5兆円規模の経済対策を提示し、

東日本大震災の復興支援のための復興特別法人税を

1年前倒しで廃止することも表明しました。

 

その他にも、法人向けの減税や低所得者向けの現金支給を検討することとしています。

 

将来的には、法人税率の引き下げも視野に入れており、

消費税率引き上げと相まって節税対策としての法人成りが改めて注目されそうです。

 

飲食店としての対応

この税率引き上げに対して、

飲食店としてはどのような対応が必要になってくるのでしょうか。

 

当然、税率引き上げに合わせて料金体系を見直すべきかどうか

という経営判断をしなければなりません。

 

需要の価格弾力性やコスト削減策などをよく検討したうえで、

経営者として決定してください。

 

ここでは、税率変更に伴い対応すべき項目として

価格表示と会計システムについて触れておきます。

 

最初に価格表示についてですが、メニュー表を修正する場合、

原則は税込価格での総額表示にする必要があります。

 

しかし、今回は1年半の間に2度の税率引上げが予定されていることもあり、

事務負担軽減のために外税表示が認められることになっています。

 

本体価格を据え置き、便乗値上げはしていないということを消費者へ

アピールするためにも外税表示にしたいと考えている人もいます。

 

ただし、この適用期間は平成29年3月31日までとなっているので注意して下さい。

 

次に会計システムについてです。市販の会計ソフトを使用して

自分で伝票入力している方も多くいらっしゃるかと思います。

 

消費税率が変更になれば当然会計ソフトも

新税率に対応したものへと変更する必要があります。

 

会計ソフト以外でも販売管理ソフトを使用している場合は

更新が必要になってきます。

 

早めの対応を検討しておきましょう。

 

新税率の適用はいつから

新税率が適用されるのは26年4月1日以降の取引からです。

 

特に難しいことはないように思えますが、

深夜営業のお店などの場合には、

営業時間が3月31日から4月1日へまたがる場合があります。

 

この場合、適用される税率は何%になるのでしょうか。

 

消費税は資産の譲渡・貸付・役務の提供をした時に納税義務が成立します。

 

そして、納税義務が成立したときに

施行されている法律に記載されている税率が適用されることになります。

 

役務の提供の場合、物の引き渡しを要する請負契約は

目的物の全部を完成引き渡した日、

物の引き渡しを要しない請負契約は役務の全部の提供が

完了した日に納税義務が成立することになります。

 

飲食店の場合、料理の注文を受け、全部を提供し終わった時点で

納税義務が成立します。

 

その時点が4月1日0時を過ぎていれば8%、

過ぎていなければ5%ということになります。

 

ですが、現実問題として4月1日午前0時きっかりに

レジや券売機の入れ替えや設定を変更することは困難です。

 

特に深夜まで営業しているお店では、次のようなケースが考えられます。

 

①31日に注文を受け31日中に料理全部を出し終わり、料金の精算が1日の場合、

 

②31日に注文を受け、料理全部を出し終わったのが1日で精算も1日の場合。

 

③注文・料理の提供・精算が全て1日の場合。これらは原則的に考えれば、

①は5%、②と③は8%ということになります。

 

ポイントは料理が提供されたのがいつかです。

 

しかし、これはあくまで原則的な取扱いであり、現実的ではありません。

 

この点、国税庁から明確な取扱いは示されていませんが、

例えば毎日午前2時にレジを締めているようなお店の場合、

4月1日午前2時までの売上を3月31日の売上として5%で

処理して問題ないものと思われます。

 

経過措置の適用

今回の消費税率引き上げにあたっては、

平成9年に3%から5%へ引き上げられた当時と同じく

経過措置が設けられています。

 

この経過措置に該当すると

来年26年4月以降の取引であっても

適用される税率は5%ということになります。

 

5%で計算してもいいですよという有利選択の話ではなく、

5%で計算しなければならないのです。

 

例えば、皆さんもご存じかも知れませんが、

戸建住宅やマンションの購入に関する経過措置の特例があります。

 

この経過措置によると平成25年9月30日までに契約を結ぶと

物件の引き渡しが平成26年4月1日以降になっても

旧税率の5%が適用されることになります。

 

適用要件として「譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物」

とされているので建売住宅やマンションには原則適用できません。

 

ただし、壁の色やドアの形状などに注文をつけることができれば

5%という扱いになっているので、

9月中に契約を結ばれた方の契約書はほとんどこのような扱いになっているかと思いますが、

念のため確認してみてください。

 

この他にもいくつかの経過措置が設けられていますが、

その中から請負の経過措置を取り上げてみます。

 

請負の経過措置については

「事業者が、平成25年10月1日の前日までの間に締結した工事の請負

(これに類する契約を含む。)に基づき、施行日以後に課税資産の譲渡を行う場合には、

旧消費税法第29条に規定する税率による。」とされています。

 

(消費税改正法より一部抜粋)

つまり、25年9月30日までに契約していれば

26年4月1日以後の取引でも5%でいいですよという扱いになっているのです。

 

この経過措置、一見すると飲食店には何の関係もないように思われますが、

中には、半年先まで予約でいっぱいというような人気店もあるかと思います。

 

このようなお店の場合9月30日までに予約を受け付けていれば、

実際の利用日が4月以降になったとしても消費税は5%でいいということになるのです。

 

ただし、相手方の注文が付されていることという条件があるので、

料理の一部でも予約客の注文に応じたメニュー構成になっている必要があります。

 

レアなケースかも知れませんが、該当する場合には、

メニュー内容をちょっと変更するだけでちょっとしたサービスになるのではないでしょうか。

 

税理士 荻原 岳志

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