飲食店の税務

月別アーカイブ: 6月 2013

今月はマイナンバー法について取り上げます。

 

マイナンバー法とは、個人情報を一元管理することを目的に、

政府が国民一人ひとりに番号を割り当てるための法案です。

 

国家による個人情報の管理というイメージから

拒否反応を示す人も多く昨年11月の臨時国会では廃案となっていましたが、

年が明けて去る5月24日に参議院で可決・成立しています。

 

マイナンバー法の正式名称は

「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」です。

 

実際の運用は平成28年1月を目標に、

最初は社会保障や税金等の各分野での利用を目指しています。 

 

手続き的には、それぞれの市町村長が個人番号を指定し、

各個人宛に個人番号が記載された通知カードで通知することになります。

 

この通知を受けた個人はパソコン等から個人番号を使って

必要な操作ができることになります。

 

本人からの希望があれば顔写真付きの個人番号カードの

交付も受けられることになっています。

 

また、法人についても同様の番号制度が利用されます。

 

法人番号は、国税庁長官が通知することになっていて、

この法人番号は商号や本店所在地とともに、

原則公表するものとされています。

 

このように法人番号は民間での自由な利用が想定されている点で、

厳格な管理が要求される個人番号とは異なる取扱いとなっています。

 

マイナンバー導入の効果

平成28年1月からは、パソコン等の端末から

各種情報記録の確認ができる予定です。

 

マイ・ポータルという情報提供ネットワークシステムを利用することで、

「給与・報酬情報」や「年金保険料、国民健康保険料等の社会保険料情報」、

「株式配当・譲渡損益、保険満期返戻金、保険年金等の金融所得情報」、

「過去の税務申告・納付情報」等を閲覧できることになっています。

 

また、年金・雇用保険の資格取得や

確定申告・各種届出書・法定調書の提出等の手続きも

パソコン上で行えるようになります。

 

その他、被災者生活再建支援金の支給といった分野でも

利用されることになっています。

 

国民にとってはこれらの各種情報がまとめて確認でき、

手続きの手間が省けるというメリットがあります。

 

確定申告の際には、社会保険の領収書等を揃える必要もなくなります。

 

税務署にとっても、各種所得情報について

効率的に正確な名寄せ出来るようになり脱税や不正還付に対して

効果的な防止策をとることができるメリットがあります。

 

ただし、事業による売上や不動産賃貸による賃貸収入などは、

結局本人による適正な申告がなければ

把握しようがないという点は今までと同じです。

 

その他にも、高額な医療費等の支払いの際、

現在は一旦本人が立て替えて支払った後に申請することで

払い戻されていますが、立て替え払いの必要がなくなります。

 

社会的に大問題となった消えた年金のような

事務処理上のミスをなくす効果も期待できますし、

個人ごとにある程度正確な所得を補足することで、

生活保護費等の不正受給の防止にも役立つことが期待されています。

 

マイナンバー導入の問題点

一方で、マイナンバーには不正取得による悪用

という情報流出に伴うリスクが常に付きまといます。

 

個人番号の流出から生じる悪意の第三者による

成りすましはアメリカなどでは深刻な社会問題となっています。

 

政府はマイナンバー法施行後、

3年を目途に個人番号の利用範囲の拡大について

検討を加えるとしています。

 

将来的には民間による利用を積極的に推し進めたいようですが、

慎重に対応する必要がありそうです。

 

また、個人番号の管理には、

大規模なシステムの構築が必要になります。

 

その見積りは初期投資だけでも

2000億円から3000億円と言われています。

 

その後も毎年200億円から

300億円の運用コストがかかります。

 

財政再建途上の日本にとっては

大きな負担であることは間違いありません。

 

消費税率引上げとマイナンバー法

マイナンバー法には、

以上のようにメリットもあればデメリットもあります。

 

国家による個人情報の管理という形態に反対する人もいれば、

費用対効果の側面から非効率だと主張する人もいます。

 

それでは、このように賛否両論のマイナンバー法が

なぜこの時期に成立したのでしょうか。

 

そこには来年4月の消費税率引き上げが

大きく影響しているものと思われます。

 

平成26年4月から消費税率が

引き上げられることは皆さんご承知のとおりです。

 

まだ確定はしていないとおっしゃる方もいるかも知れませんが、

税率引上げの撤回もしくは延期という選択肢は

国際的に見て難しいのではないでしょうか。

 

仮に税率引上げを延期した場合には、

次のような影響が考えられます。

 

日本の財政再建路線に疑問符が付き、

国債が売られる

→長期金利が上昇し始め、何かのきっかけで金利が急騰する

→債権価格が下落し、実体経済が悪化し、株価が下落する

→債権・株式に含み損を抱えた金融機関は、貸し渋り・貸し剥がしに走る

→金融不安が実体経済に悪影響を与え、更に景気を悪化させる。

 

このようなリスクを考えると消費税率は

引き上げざるを得ないものと思われます。

 

少々、話が横道にそれてしまいましたので、

本題に戻ります。

 

消費税率が引き上げられる際に問題となるのは、

低所得者対策です。

 

一般的に消費税は所得の高い人よりも低い人に対して

負担が大きくなる逆進的な税金だと言われています。

 

経済学的には消費税に逆進性はない

という理論も成り立つようですが、

今までより自由に使えるお金が減ってしまうのは確かで、

その影響度は可処分所得の少ない人の方が大きく感じられるはずです。

 

そこで何らかの低所得者対策を講じる必要が生じてきます。

 

今、議論されているのは、軽減税率と給付付き税額控除で、

それぞれに一長一短がある仕組みとなっています。

 

軽減税率とは、

食料品等の生活必需品に低い税率を適用することで

低所得者の負担感を和らげようとするものです。

 

先に公表されている税制改正大綱では

「消費税率の10%引き上げ時に、軽減税率制度の導入をめざす」

と記載されています。

 

この軽減税率には、

軽減税率の適用対象品目の線引きが困難なことや

軽減税率導入の効果が低所得者だけでなく

高所得者にも及んでしまう等の問題があります。

 

他方、給付付き税額控除とは

税額控除と手当給付を組み合わせた制度で

納税額が控除額より多い場合は税額控除、

少ない場合は給付を受けるという制度です。

 

課税所得の生じない人にとっても恩恵が受けられるという点で

低所得者対策として有効な制度です。

 

ただし、この制度を有効に活用するには

各個人の所得をある程度正確に把握し、

不正受給(還付)を防止する必要があります。

 

全国民の所得をどうやって把握していくのか

という問題は大きな課題です。

 

また、所得が低い資産家を

どのように扱うのかという問題もあります。

 

ここで、マイナンバー法に話を戻します。

 

将来的には個人番号を使うことで、

ある程度正確な所得を把握することが期待されています。

 

このように個人ごとの所得把握が可能となれば、

給付付き税額控除適用上の問題も解消されることになります。

 

つまり、給付付き税額控除を利用するために、

マイナンバー法の成立が必要だったと考えることもできるのです。

 

与党税制改正大綱では

「軽減税率の導入をめざす」こととされていますが、

今後どちらの方向に向かって進んでいくのか気になるところです。

 

税理士 荻原岳志

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