飲食店の税務

月別アーカイブ: 3月 2013

所得税の申告期限が迫ってきました。

 

皆さん、もう申告の手続きは終わりましたか。

 

前月号では、

税務署に否認されないための所得税の確定申告を取り上げましたが、

今月号では、確定申告における節税対策を取り上げたいと思います。

 

個人事業主が事業所得の申告をする前提で話を進めていきますが、

既に申告が終わってしまった方も

来年へ向け今から対策を考えておいてください。

 

節税対策の仕組み

最初に個々の具体的な対策のお話をさせてもらう前に、

節税対策とは、どのような仕組みで成り立っているのかを

確認しておきます。

 

考え方の基本を抑えておけば、色々な場面で応用が利きます。

 

所得税における節税対策は大きく次の4つに分類することができます。

 

「利益の繰延」・「所得の分散」・「所得区分の変更」・「その他特例制度の利用」

の4つです。

 

以下では、4つの対策の考え方を説明してから、

具体的な事例を取り上げていきます。

 

なお、この他にもよく節税のノウハウ本などに

書かれている必要経費の見直しという方法があります。

 

これを節税対策と言うかどうかは別として、

一番分かりやすい部分だと思いますので、

まずはこの必要経費の範囲から見ていくことにします。

 

事業所得の必要経費

事業所得の必要経費として認められるのは

事業所得の収入を得るための売上原価や

直接必要な費用と業務上生じた販売費・一般管理費です。

 

簡単に言うと売上を得るために必要な費用ということです。

 

かなり大雑把な括りですので、

実務上判断に迷うケースも多いのですが、

ポイントは売上獲得のために必要だということを

どれだけ客観的に主張できるかというところにあります。

 

以下のものは一般的に事業所得の必要経費として

認められているものですので、

漏れがないか再度確認してみることをお勧めします。

 

・自宅を店舗や事務所として使用している人は

使用割合に応じた償却費等を経費にできます。

 

・所得税・住民税は経費になりませんが、

固定資産税・事業税は経費になります。

 

・従業員のためのリゾートクラブやスポーツクラブの利用料も

必要計経費とすることが可能です。

 

・事業の遂行上必要な技能・知識の習得、

研修費用は必要経費です。

 

・退職金規程があれば従業員の退職金も必要経費になります。

 

・中小企業のための退職金制度である中退共へ支払いは全額経費です。

 

・旅費規程を定めることで給与課税を受けることなく

旅費日当の支払いが可能になります。

 

・交際費は事業との関連性が当然必要ですが、

法人のように限度額の制限はありません。

 

 以下のように、

本来発生した期間で計上できるものを忘れている場合も注意が必要です。

 

・12月中にクレジットカードで消耗品やサービスを買った場合、

カードの支払いが年明け1月以降であっても12月の経費になります。

 

・取引先と毎月20日締めの契約になっている場合、

21日から月末までに発生したものも未払計上できます。

 

給料計算の締め日が月末以外の場合の給与も同様に処理できます。

 

また、必要経費以外の所得控除についてもよく見直してください。

 

・国民年金や国民健康保険などの社会保険料は、

たとえ過年度分の支払いであっても支払った年度で

所得控除することになるので、気を付けてください。

 

・経営者のための退職金制度である小規模企業共済は

支払った保険料全額が所得控除の対象です。

 

節税効果を考えると民間の保険会社が

販売している年金保険よりもかなり高い運用利回りが期待できます。

 

利益の繰延

利益の繰延とは、今年の売上を来年に回したり、

来年の費用を今年に取り込んだりすることで

今年の利益を減少させる節税方法です。

 

例えば、来年必要な消耗品を今年購入することで

今年の経費とすることができます。

 

また、日持ちするような商品を宅配販売しているような場合には、

発送日を12月31日から1月1日とすることで、

売上の計上を翌期に回すことができます。

 

あくまで合法的な範囲でという条件付きですが、

売上・経費の帰属する年は、ある程度の調整が可能です。

 

更に、税務上「短期前払費用」というものが認められています。

簡単に説明すると来年1年分の家賃や保険料を今年中に一括で支払った場合、

その支払った全額を今年の経費として認めるというものです。

 

多少細かい要件もあるので、実際に利用する場合には注意が必要ですが、

この短期前払費用は小規模企業共済の掛け金にも利用できますので、

利益が出過ぎた場合には是非検討してみてください。

 

所得の分散

所得税の年税額は課税所得×税率で求められますが、

ここで用いる税率は超過累進税率となっています。

 

超過累進税率とは、一定の所得金額までは税率が一定で、

一定の所得を超過した場合には

その超過部分に対してのみより高い税率を適用するように

段階的に税率が上昇していく仕組みのことです。

 

よく高額所得者は所得の半分を税金で持っていかれる

というような話を聞きますが、

正確には所得195万円以下は5%、所得195万円超330万円以下は

10%というように所得の増加に応じた超過累進税率となっていいます。

 

そのため、所得の多寡に関わらず195万円以下は

誰でも5%の税率が適用されているのです。

 

そして、この超過累進税率を前提に考えると

1人の人間に所得を集中させるよりも複数の人間で所得を分散させた方が、

トータルの納税額を少なくできることが理解できると思います。

 

単純な例で考えると1950万円の所得を1人で得ている場合

税額は約500万円になりますが、

10人で分けた場合1人頭195万円となるので、

10人分の合計税額は100万円に届きません。

 

もちろん何の対価性もなく所得を移転すれば

贈与などの問題が生じてきますが、

上手に活用すれば大きな効果が得られます。

 

具体的には、専従者給与を利用したり、

法人成りして親族に給与を払ったりという行為が考えられます。

 

所得区分の変更

所得税の特徴は先にも触れた超過累進税率の他に

全ての所得を10種類の区分に分類し、

各所得区分ごとに所得の計算方法を定めている点にあります。

 

この点、法人税では中小企業向けの特例はありますが、

単一の比例税率(所得の多寡に関わらず一律の税率)を採用していて、

所得税のような所得区分は設けていない点で大きく異なっています。

 

このような計算の仕組みの違いが

税額計算に大きく影響してくることになります。

 

所得税の中だけでも、

ある所得から他の所得へ所得区分が変わると

所得計算の方法が変わるため、

収入金額が同じでも税額が異なるとうことが起き、

更に個人で得ていた所得を法人経由で得る形態に変更すると

所得税の課税から法人税と所得税の課税へと課税方法が大幅に変わるので、

当然税額にも大きな影響を与えることになります。

 

 ひとつの例として

個人事業主が法人成りしてその会社から給料をもらうようになった場合を考えてみます。

 

今までは事業所得として申告していましたが、給与所得へ変わることになります。

 

そして、給与所得には実際の支出とは関係なく

一定額の給与所得控除という必要経費が認められています。

 

そのため、一般的には個人事業から法人成りした方が

法人税の負担を考慮しても税負担が軽減されることになるのです。

 

また、毎年の給与を減らして、

税務上経費として処理できるような保険に加入し、

退職時にその保険金を原資に退職金の支給を受けた場合、

トータルとしての税負担は更に減少することになります。

 

これは退職所得という区分が給与所得という区分よりも

税額が低くなるような計算構造になっているためです。

 

その他、所得税では損益通算の制限のために

切り捨てになっていた赤字も法人成りすることで活用することが可能になります。

 

更に、相続税などの資産税も考慮していくと、

実に様々な仕組みが考えられることになるのです。

 

その他特例制度の利用

これは、特定の目的のために政策的に設けられたものなので、

その存在を知っているかいないかが納税額に影響してくるという意味で

単なる知識の問題です。

 

ですが、このような制度は毎年の税制改正で

必ずといっていい程変更されているので、

いかに正確な情報を収集できるかが勝負になります。

 

・青色申告の申請をすることで青色申告特別控除10万円が利用できます。

更に複式簿記により貸借対照表を作成できれば65万円の控除が利用できます。

 

・青色事業専従者に関する届出を提出することで、

家族へ支払う給与を必要経費とすることができます。

 

・事業用の固定資産について、

一定の届出書を提出することで

より早期に費用化できる定率法を選択することができます。

 

・取得価額が30万円未満の固定資産であれば

年間300万円まで経費処理できます。

 

おわりに

色々節税に関する事項を思いつくままに羅列してみましたが、

節税は利益が出て初めて必要となる道具です。

 

最近は、円安・株高によって人々のマインドも

多少良くなってきているようですが、

まずは、安定した利益を稼げる仕組み創りが重要です。

 

節税スキームを重視するあまり、

現場の運営に支障をきたすようでは本末転倒です。

 

あくまで節税は本業を営むうえで

資金繰りをサポートするひとつの手段だということを忘れないでください。

 

税理士 荻原 岳志

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