飲食店の税務

月別アーカイブ: 2月 2013

いよいよ所得税の確定申告シーズンに突入しました。

 

飲食店を個人で経営している方にとって

確定申告は避けて通れないものですが、

手間暇をかけて税額を計算し納税しなくてはならないので

気の重い作業かもしれません。

 

私たち税務申告に携わる者にとっても、

一年の中で最も忙しい時期のひとつで、

年に一度のお祭りだと気分を盛り上げていますが、

出来れば避けて通りたいという人も多いようです。

 

個人は法人のように決算月を選択することが出来ず、

全ての人が1月から12月までの暦年課税なので、

日本全国で事業を営む全ての個人がこの時期に一斉に申告することになります。

 

事業以外にも、不動産や株を譲渡したり、

医療費控除や住宅ローン控除を初めて受けたりする人なども

確定申告が必要になります。

 

申告者の数は国税庁が公表しているデータによると、

ここ数年2300万人を下回ることはないということですが、

これは国民5人に1人の割合にもなります。

 

これだけの数の人が一斉に申告する訳ですから、

対応する税務署も大変だろうと思います。

 

長年事業を営んでいる方の中にも、

税務申告は年に一回だけのことなので中々慣れないという方が多いようです。

 

そこで、今回は所得税をテーマにお話を進めていこうと思います。

 

一口に所得税といっても、その内容は多岐に渡りますので、

ポイントを絞り今回と次回の2回に分けてお話させていただきます。

 

まず今回は、税務調査を想定して税務署から否認されない申告をするために

特に注意すべき事項をとりあげます。

 

そして、次回は今回の基本を抑えたうえで、

所得税の節税に有効な対策についてとりあげていく予定です。

 

ただ、ちょっとその前に先月24日、

自民党から平成25年度の税制改正大綱が発表されていますので、

概略についてざっと触れておきたいと思います。

 

きっと皆さんの今後の生活に影響してくる部分もあると思いますので、

ひとつの判断材料として大枠は把握しておいてください。

 

平成25年度税制改正の概略

今回の税制改正は景気対策の一環として

企業向けに多くの減税措置を手当てしているところに特徴があります。

 

一定の設備投資には30%の特別償却または3%の税額控除を認めています。

 

試験研究の税額控除も従来からの枠を拡大しています。

 

雇用対策としては、給与の支払額や雇用者数を増やした企業向けに

税額控除を認めています。

 

来年増税となる消費税に関する部分では、

税率改正前の駆け込み需要やその反動減による景気の落ち込みに配慮して、

住宅ローン減税の拡充や自動車取得税の廃止などの措置が講じられています。

 

また、低所得者対策と言われている軽減税率は、

税率8%の段階での導入は見送られることになりました。

 

以前にも指摘しましたが、軽減税率の導入は飲食店経営者からすると

決して喜ばしいことではありません。

 

外食産業が提供するサービスは贅沢品だということで

軽減税率の対象とされない可能性が高いからです。

 

例えば同じラーメンでも材料をスーパーで購入して

自宅で食べた場合の消費税は5%で、

中華料理屋で食べた場合の消費税は10%

ということになってしまう可能性が高いのです。

 

このとこは単に税率が上がる以上のインパクトがあります。

 

そもそも軽減税率の導入が直接低所得者対策に結び付くことはないですし、

また、税制は消費者の行動に中立的(影響を与えない)であるべきなので、

低所得者対策は軽減税率導入によるのではなく、

社会保障の枠組みの中で対応していくべきだと思われます。

 

所得税・相続税に関する改正については富裕層への課税が強化されたと言われています。  

 

所得税は所得4000万円超を対象に最高税率が40%から

45%へ引き上げられます。

 

相続税は基礎控除が引き下げられたうえに、

課税財産6億円超を対象に最高税率が50%から55%へ引き上げられます。

 

ただ、この税率引上げがどれだけ税収増加に結び付くのか

効果は甚だ疑問だという声もあります。

 

実際、平成23年度予算との対比で見てみると、

所得税13.5兆円、相続税1.4兆円の税収見込みに対して、

今回の税制改正による増収効果は所得税で590億円、

相続税で2420億円と見積もられています。

 

予算に占める増収効果の比率を見てみると

所得税は0.5%、相続税は17%ということになります。

 

所得税に関して言えば最高税率引上げの効果はほとんどありません。

 

相続税については大幅な増税となっていますが、

その内訳を見てみると最高税率引上げによる増収効果は

210億円で残りの増収分は基礎控除の引下げによるものです。

 

つまり、相続税の課税対象が今まではごく一部の資産家に限定されていたものが、

より一般大衆化された結果なのです。

 

このように見てみると、新聞等ではよく「富裕層への課税強化」

という報道がされていますが、

富裕層への増税が税収全体に与える影響はほとんどありません。

 

与党自民党による夏の参院選へ向けた消費税増税への

国民的コンセンサスを得るためのパフォーマンスという側面が強いように感じられます。

 

確定申告の際の注意点

 さて、今回のメインテーマの確定申告へ話を戻します。

 

税務申告をする際に気を付けるべきところですが、

何と言っても一番は売上の計上です。

 

税務調査の現場では、

調査官に売上の計上に漏れがないということを

証拠資料に基づき説明する必要があります。

 

例えば、券売機から発行される食券でしか注文出来ない

というシステムにしておけば、

発券の履歴を追うことである程度正確な売上金額が把握できるということになります。

 

しかし、実際には料金の精算はほぼ現金手渡し

というお店が大半かと思われます。

 

そのようなお店は特に注意が必要です。

 

現金の受け渡しは改ざんが簡単にできるので、

そこを指摘されないように、注文伝票や会計伝票、

レジのジャーナルなどの間の整合性を保ち、

営業日報等で、売上金額と仕入金額を集計して、

残金を定期的に預金口座へ振り込むというような管理が必要です。

 

このような資料の積み上げが調査官の心証を良い方向へと導くのです。

 

その他にクレジットカードによる支払いや掛売りがある場合の売上は、

入金日ではなく実際の売上日ということにも注意してください。

 

次に気をつけるべきは、人件費です。

 

多くの飲食店ではパートやアルバイトを採用していると思います。

 

パート・アルバイトも正社員と同様に給与を支給する際は、

源泉徴収税額表をもとに所得税を源泉徴収します。

 

源泉徴収された所得税は、最終的に年末調整で精算されるのですが、

ここで注意しなければならないのは税額表の適用区分です。

 

給与の支給を受ける人の立場によって、甲欄・乙欄がありますが、

甲欄とは給与の支払いを受けているのが1ヶ所だけの人で、

乙欄とは他からも給与をもらっている人です。

 

甲欄・乙欄は源泉徴収税額に大きな差があります。

 

月額15万円の場合で比べてみると

扶養家族のいない甲欄適用者の源泉所得税は2980円ですが、

乙欄だと8700円で倍以上の金額になります。

 

甲欄を適用するためには、給与の支払者へ扶養控除申告書の提出が必要です。

 

この手続きを省略していると甲欄での給与計算が否認され、

乙欄で計算しなおしということになってしまいます。

 

修正の対象が過去1年間に1人だけであれば

追徴税額は数万円程度で済むかもしれませんが、

数十人単位で過去3~5年という話になると相当の金額になることもあります。

 

追徴された所得税は本来給与の受給者が負担すべきですが、

本人に請求しようとしてもすでに退職しているケースも多く、

実際は事業主負担となってしまうことが多いようです。

 

パート・アルバイトといえども、

扶養控除申告書は入社時と年末調整時に必ず入手するようにしましょう。

 

続いては、自家消費についてです。

 

飲食店経営者の中には、

店で提供している料理を自分で食べるということは

ほとんどないという方もいらっしゃいますが、

そのことを調査員に証拠立てて立証することは難しいものです。

 

そこで、実務的には夫婦二人で経営していれば

1日500円/人×2人×25日で25000円/月、年間300000円

というような計算で売上を計上して対応することになります。

 

その他に注意すべきは、店舗や設備の減価償却費の計上です。

 

個人の場合の減価償却は強制なので、

法人のように利益調整に利用することは出来ません。

 

また、自宅兼店舗のようなつくりの場合には、

床面積等で計算した事業供用割合分しか経費に出来ませんので、

その計算根拠を説明できるように資料を整備しておいてください。

 

最後に在庫の扱いについてです。

 

基本的に飲食店では、それ程多くの在庫を抱えることはないと思います。

 

それでも、思っていた以上に利益が出てしまったような年は

在庫の計上を減らすことで利益を圧縮しようと

考えてしまうことがあるかも知れません。

 

これも、あまり極端に行うと毎年の原価率の推移から

異常値として把握されてしまいますので、ご注意ください。

 

次回は、節税という観点から所得税のお話をしようと思いますので、

ご期待ください。

 

税理士 荻原岳志

 

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