飲食店の税務

月別アーカイブ: 11月 2012

こんにちは、税理士の荻原岳志です。

 

突然ですが、皆さんは節税と脱税の違いをご存じでしょうか。

 

節税は合法的な行為で、脱税は違法行為

というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

 

また、節税とは違うけど、脱税でもない租税回避といった行為もあります。

 

この節税・脱税・租税回避という行為はともに納税額を減らすことが目的ですが、

明確に区分できない場合もあり、税務調査でもよく問題になる事項です。

 

これらの違いを知っておくことは、

今後の皆さんの税務調査への対応にも役立つと思いますので、

今回は節税・脱税と租税回避行為の違いについて、

お話ししたいと思います。

 

節税は積極的に活用を

 

まずは、節税についてです。

 

節税行為は法律上何の問題もなく、

納税者にとって当然の権利です。そもそも節税とは、

税法をつくる段階で、

納税者の税負担の軽減や特定の政策目的のために

利用されることが想定されている行為です。

 

例えば、いまの所得税では、

給与よりも退職金の税金の方が低くなっています。

すから、毎月もらっている給与を減らし、

退職金を増やすことでトータルの収入は一緒でも

税金を大きく減らすことができるのです。

 

また、店舗の内装工事や厨房設備のような固定資産に対して、

減価償却をする場合、定額法よりも定率法の方が早い時期に

経費処理できるので、結果税金は安くなります。

 

これらは、いわゆる節税であって合法的な手法です。

 

その他にも、特別償却や税額控除のように、その存在さえ知っていれば、

リスクを冒すことなく税金を安くできる制度もあります。

 

このような特例措置は、毎年のように変更されるため、

どれだけ上手に税法を活用できるかという対応策が

納税額に大きく影響してくることになります。

 

脱税は犯罪です

 

次に、節税の対極にある脱税についてです。

 

脱税も納める税金を少なくするという点では節税と同じですが、

「偽り又は不正の行為」であって、明らかな法令違反であるという点で

節税とは全く異なる行為です。

 

それでは「偽り又は不正の行為」とはどのような行為を指しているのでしょうか。  

 

例えば、売上金の一部を隠し口座へプールし

その存在を「隠ぺい」するような行為です。

 

その他にも、二重帳簿の作成や架空人件費の計上などは

「仮装」行為として脱税の対象になります。

 

このような「隠ぺい・仮装」を伴う脱税行為について税務調査で指摘された場合、

追加で納める本税のほかに本税の35%の重加算税を納めなくてはならなくなります。

 

更に悪質な場合は、懲役刑や罰金刑を科されることもありえますので、

くれぐれもご注意ください。

 

節税でも脱税でもない租税回避行為とは

 

最後に、租税回避行為についてです。

 

租税回避については、明確な定義や規定はないと言われています。

 

租税回避も納める税金を少なくする行為ですが、

形式上法令に従った行為である点で、脱税ではありません。

 

では、なぜ税務調査で問題とされるのでしょうか。

 

それは、租税回避行為が、形式的には法令に違反していなくても、

税金を安くすることだけを目的に通常ありえない行為をしているためです。

 

その結果、歳入の確保という税本来の目的が達成できなくなるばかりか、

手間暇をかけてこのような行為を行うのはお金持ちが多いため、

所得水準に応じた税負担という側面からも社会的な不平等を生じさせてしまいます。

 

ですが、法令上問題ないのに否認されるとなると、

納税者の立場からは、どこまでが許されて、

どこからが否認の対象になるのか分からないという不都合が生じます。

 

実際の事例を取り上げて見てみましょう。

 

数年前、新聞紙上でも話題になった贈与に関する判決です。

 

当時、某有名貸金業者の元会長は、

贈与税対策のため、息子を海外へ居住させていました。

 

日本の贈与税は、財産をもらった人(受贈者)が納める仕組みになっていますが、

その当時、海外に居住している受贈者に対して課税できるのは、

日本国内にある財産に限るものとされていました。

 

そこで、元会長は国内にある財産を海外へ移動させる一方で、

息子を海外に居住させ、一定期間経過後、

海外へ移動させた財産を息子へ贈与することで、

贈与税の課税を免れようとしました。

 

この一連の行為は、

誰が見ても贈与税の課税を免れるためのものであることは明らかでしたので、

税務署としても看過できないとして贈与税を課税してきました。

 

しかし、裁判の結果、最高裁で国側は敗訴し、

贈与税を課税できなかったばかりか、

事前に納められていた贈与税に対する利息として

400億円もの支払いをしなければならなくなってしまいました。

 

この判決で取り上げている事例は明らかに租税回避行為と言えます。

 

それにも係わらず、なぜ国側は敗訴してしまったのでしょうか。

 

それは裁判所が税金の根本原則のひとつである

「租税法律主義」の考え方を徹底したためです。

 

「租税法律主義」とは、税金を課すためには、

その根拠を法律に記載しなければならないという考え方です。

 

例え、税金を免れるためだけに一連の行為を行ったとしても、

法令にその行為を取り締まる定めがない以上、

その行為を否認することはできないということです。

 

納税者である私たちの判断根拠になるのは、法律です。

 

その法律に記載がないのに、

特定の価値判断で課税するという行為は許されないということです。

 

皆さんも、「租税法律主義」という言葉を覚えておいてください。

 

税務調査の現場で調査官から、否認事項を指摘されても、

根拠となる法令上の条文を明らかにできない場合には、

その指摘を受け入れる必要はないのです。

 

納税に対するスタンス

 

ところで、皆さんにとって税金とはどんな存在でしょうか。

 

国の維持繁栄のために自ら進んで負担すべき支出でしょうか。

 

法律に定められた国民の義務として

否応なしに負担せざるを得ない支出でしょうか。

 

職業柄、業種を問わず様々な経営者の方々と

税金話をさせていただく機会が多いのですが、

税金に対するスタンスには大きく分けて2つのタイプがあるように感じられます。

 

1つ目のタイプは、ほとんどこのタイプだと思われますが、

合法的な範囲で納税額は極力抑えたいという人です。

 

このタイプの人たちは、納税資金も含めたところで、

会社全体のキャッシュフローを最大化しようと考えているので、

合法的な節税対策も積極的に採用する傾向にあります。

 

経営者として当然の姿勢ですし、

私たち税理士にとっても、腕の見せ所といったところです。

 

ただ、中には脱税まがいの無理難題を

要求してくる経営者の方もいたりします。

 

最終的には、会社側の判断ということになるのでしょうが、

このような場合、後々のリスクもよく説明し

理解してもらうことも私たち税理士の仕事です。

 

もし、当初の申告内容を税務調査で否認され、

修正申告を提出しなければならなくなってしまったような場合、

修正申告による本税の増加だけでなく、

過少申告加算税10%(もしくは15%)や、

仮装や隠ぺいがあったと認定された場合には、重加算税35%が課せられます。

 

更に本来の申告期限からの延滞税も最大年14.6%かかってきます。

 

5年も前の修正申告を提出するような場合、

これらの加算税・延滞税だけで本税の額を超えてしまうこともありえます。

 

無理な節税には、

それなりのリスクがあるということは忘れないでください。

 

2つ目のタイプは、納税額にあまりこだわらない方たちです。

 

お金がありあまって納税などはどうでもいいということではありません。

 

節税対策には、所得の分散や税率の違いなどを利用するものもありますが、

その多くは課税を繰り延べるためのものです。

 

どういうことかと言うと、今納めなければならない税金を、

節税対策で、数年後に支払えばいいように先延ばしするということです。

 

このような節税対策の多くはキャッシュアウトを伴います。

 

このキャッシュアウトは決算書上、経費として処理されるため、

節税をすればするほど、納税額は少なくなりますが、

当期利益も減ってしまうことになるのです。

 

決算数値と納税額はある程度連動しているため、

決算書上の利益を落とさずに、

納税額を抑えるということは中々難しいことなのです。

 

結局はどちらを優先するかという二者択一の判断になってきます。

 

1番目のタイプの人は納税額の多寡を重視していて、

2番目のタイプの人は決算数値を重視しているということができます。

 

さて、皆さんは1のタイプでしょうか、2のタイプでしょうか。

 

どちらもそれぞれ正しい判断です。

 

大事なのは、軸足をどこに置くかを明確にし、

首尾一貫した姿勢で経営に挑むということではないでしょうか。

 

税理士 荻原岳志

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